No.63 広州の元宵節

No.41「元宵節の風俗」で香港の元宵節について書きましたが、今回の広東旅行も最終日が元宵節でしたので、今回は広州の元宵節について書いてみようと思います。新年の満月を祝うという風雅な習慣は廃れてしまったのではないかと以前書きましたが、さにあらず、広州では元宵節を盛大に祝っていました。というのも元宵節は春節の休日の最終日、または日本でいう仕事始めという意味合いがあるため、商店ではこの日に獅子舞を仕立ててにぎやかに商売繁盛の縁起担ぎをする訳です。また、人が集る広場などにはランタンにナゾナゾが書かれている札が吊るしてあり、これに正解すると景品が当たるというので人々が争ってその札を集めていたのも印象的です。これも宣伝、人寄せ、商売の一環で、月を愛でるという風雅な風習とは少しばかり違うのですが、何はともあれ元宵節が健在だったというだけでも嬉しくなってしまいます。

ちなみに食材商店の店先にはミカン、セロリ、葱、レタス、大蒜といった野菜を束ねたものに赤い祝儀袋を飾り、これが軒から吊るされているのが印象的でした。なんでも獅子舞が来ると飾ってある祝儀袋をわたすそうです。郊外の農村にも家の門先に似たような飾りが吊るしてありましたが、こちらはミカンと大蒜ぐらいで貧弱なのに対し、さすがは広州の食材商店、野菜の種類も豊富で華やかです。日本でも節分を迎えると柊に鰯の頭を刺したものを玄関の外に飾って邪気払いにしますが、おそらくこれらの野菜にも何か意味があるのだろうと聞いてみると、ミカンは中国語で「桔子」と書くので「大吉」を意味し、セロリは「芹菜」と書くので「芹」と「勤」の語呂合わせで「勤勉」、葱は「葱」と「聡」の語呂合わせで「聡明」、レタスは「生菜」と書くので「生意好」(商売繁盛)、ニンニクは「大蒜」と「打算」の語呂合わせで(計算高い)と言うことだそうです。「勤勉」で「聡明」「計算高」ければ「商売繁盛」間違いなし、今年も「大吉」と言ったところでしょうか。いかにも商店に飾りそうな縁起物です。

その晩は残念ながら雨が降り、満月を祝う事ができませんでしたが、その代わりに元宵節につきものの胡麻団子を食べて広州最後の夜を楽しみました。その胡麻汁粉の甘く滑らかなこと、そういえば商店街で昼間見かけたお兄さんが、物干し竿かと思うほどやたらに長い擂りこ木で胡麻を熱心に磨っている姿を思い出しました。あまり売れているようには見えませんでしたが、一生懸命で楽しそうな仕事振りにこちらも思わず笑みがこぼれます。今年も一年よい歳であるように願うばかりです。

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