2016/08/26
今年の3月、研修を兼ねて調理場全員で広東省に行きましたが、そこで食べた風変わりな卵料理「炖禾虫」をご紹介しましょう。「禾虫」とは日本では釣り餌となるゴカイのことで、このゴカイと色々な副材料を卵に混ぜ、これを陶器の器に入れて一度蒸した後にオーブンなどに入れて焼いた料理です。ゲテモノ食いで有名な広東料理ですから、日本人が絶対に食べないようなものが料理にされるのですが、「炖禾虫」はその究極の一品と言ってよいかもしれません。この「炖禾虫」、料理書にはよく出てくる料理なので以前から名前と作り方は知っていましたが食べる機会がなく、今回初めて食べてみたわけです。その第一印象は?ゴカイと言われなければいたって普通の卵料理で美味しいものでした。また想像するよりもゴカイそのものはごくごく小さなものなので見た目にも解りにくく、椎茸の千切りが入っていると言われればそれで通ってしまうことでしょう。ただ、目を凝らすとやはり細かな足がたくさん付いているので、まぎれもなくゴカイである事が解ります。現地の人が言うにはゴカイの干したもので出し汁を取ると美味しいスープになるとか。日本人には理解できませんが、見た目の悪いゴカイも味の点では優れた食材なのでしょう。
ゴカイの話で気持ち悪くなった方もいるかも知れませんが、気持ち悪いついでに、料理書にはゴカイのおもしろい砂ぬき方法が書かれているのでこれを紹介しておきましょう。生きたゴカイには砂などがたくさん付いているため、先ずこれを落とさなければなりません。その方法は水に塩を入れて塩水を作り、この中にゴカイを入れて砂が下に沈めば、ここに荒縄を垂らすとゴカイが縄に付いて来るので、引き上げて水で洗うというものです。想像したたけで不気味ですが、美味しい「炖禾虫」を作るには欠かせない一手間で、原始的かつ合理的な方法とも言えます。広東に行かれた際は是非この風変わりで美味しい卵料理「炖禾虫」をご賞味あれ!